人生を振り返るとき
「人生を振り返るとき、人は皆自分なりの力と軌跡に満足するほかはない。
幸も不幸も結局はモノの考え方、自己満足の度合による・・・」
そうはいっても先輩の時代の社員生活は、苦労はしてもドラマチックな経験と誇りのもてた毎日であったでしょう。
「逆に今のようにモーレツイズムが否定されますと、会社型人間は昔の武士が急に侍をやめて町人になったように、それまで天下国家を論じ、大所高所からものを見ていたのが・・・
またいままで会社と一体になってきた充実感や安定感、安心感がなくなるため、これからは趣味や教養で生きろといわれても、急に心の切換えをするゆとりがないでしょう」
「たしかにわれわれの世代は、常に危機感と飢餓感に脅かされていないと、かえって落ち着かない時代で、またその恐怖感が人間をしゃにむに仕事に駆り立てた面もある。
しかし、国も会社も物質的・精神的に飢餓感、窮乏感がないと原動力が生まれなかったという気はするね」
「私はむしろ明治維新以降の武士のように、時代は鎖国から文明開化に移ってしまっているのに、精神構造は昔のまま対応しようとし、足を靴に合わせていたような気がします。
戦後の軍国主義から民主主義への切換え、現在のモーレツ主義からビューティフルへの転換、どうも中身のほうがまにあわず、現在の豊饒の時代、高齢化社会への対応も、気持ちの持ち方の転換が追いついていないという感じです」